Market Data

新型コロナウイルスがもたらすモバイル市場への影響

App Annie

多くの企業が在宅勤務を要請。また、カンファレンスイベントの中止、フライトのキャンセル、学校の休校、小売店や飲食店への打撃など各方面で影響が出ています。外出を控えるようになるなか、コミュニケーションや余暇のために世界全体でアプリへの需要は高まるばかりです。

2020年に入ってからの10週間は、世界中の国、そして個人の生活を劇的に変えました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が世界中に広がり、ニュースの話題を埋め尽くすだけでなく、金融市場を揺さぶり、旅行、医療、外食など幅広い業界に劇的な影響を及ぼしてきました。そして、アプリも例外ではありません。

今回、アップアニーでは、ビジネス、教育、ゲーム、ソーシャル、エンターテイメント、ライドシェア、フードデリバリー、ファイナンス、マッチングなど各カテゴリーのアプリのデータから、私たちの日常的な生活に新型コロナウイルスがどのような影響を及ぼしているのかを分析しました。 

新型コロナウイルスのパンデミック期、中国とイタリアでアプリの利用時間が急増

新型コロナウイルスの影響が段階的に強まっているのを日々感じることでしょう。新たなアウトブレイク(突発的な感染拡大)が起こると、政府や企業は封じ込め策で対処します。第一波は中国を襲い、続いてイタリア、日本と韓国、次にフランスとドイツへと広がりました。さらに最近、米国と英国でアプリ市場が影響を受ける兆候が目につくようになっています。自宅勤務を奨励、要請されるこの時期、アプリに費やす時間は多くなります。情報を探し、仕事のためのツールを使い、エンタメを楽しみ、つながりを持つことで、日常生活から抜け落ちたものを埋めようとしているのです。

中国では都市封鎖が2020年1月に始まりました。それに続く2月、中国における1日あたりのアプリの利用時間が平均5時間に急上昇しました。これは2019年の平均に比べて30%増の数字です。3月15日の時点で感染者数が世界第2位のイタリアでは、やはり2番目の伸び率となる11%増を記録しています。

新型コロナウイルスが基幹産業に及ぼす影響と、それが段階的に市場に波及する状況を調査するなか、ある核心的な事実が見えてきました。それは、こうした緊急時には、アプリにますます多くの時間を割くようになるということです。

最初の波:ビジネスアプリと教育アプリ

アップアニーが注目したアプリ市場での最初の大きな動きは、中国におけるビジネスアプリ利用の急上昇でした。都市の閉鎖、在宅勤務の導入、社会的距離を置く政策を受けて、ビジネスアプリのダウンロード数と利用時間が増加しています。

実際、2020年2月2日から始まる週は、中国におけるiOSアプリのダウンロード数が過去最大になりました。ビジネスアプリと教育アプリは、アプリのカテゴリー別ダウンロード数で最大の伸びを示しています。2020年2月前半のビジネスアプリと教育アプリのダウンロード数は、2019年の週平均値の約2倍に達しました。この時期に人気を集めたアプリは、HUAWEI CLOUD WeLinkDingTalkZOOM Cloud Meetingsなどです。

似たような傾向がイタリアでも見られます。イタリアでの新型コロナウイルスの感染例は2020年2月26日に400件に急増し、11の自治体が封鎖状態に入り、同国が欧州における新型コロナウイルス感染の中心地になりました。2020年3月7日までに4600人以上の感染例が報告されています。イタリアは2020年3月10日から、国内全域で移動制限を実施しました。3月の第1週、イタリアにおけるビジネスアプリのダウンロード数(iOS App StoreとGoogle Playの合計)は76万1000件に達し、同カテゴリーの週間値で過去最大を記録。この数字は前週(2番目に高い週)から85%上昇し、さらに過去1年の週平均値から135%の増加となっています。

新型コロナウイルスの感染が広まるにつれて、他の市場でも同じような傾向が現れ始めています。感染の影響を受けている地域で多くの企業が在宅勤務の施策を打ち出したことから、仕事を続けるために、スマートフォンアプリを利用してコミュニケーションやコラボレーションを行ったり、テレビ会議に参加したりしています。世界全体では、ZOOM Cloud Meetingsが多くの市場でダウンロード数ランキングのトップに立ちました。 

zoom cloud meetings app tops download ranks march 2020

2020年3月16日の時点で、ZOOM Cloud Meetingsは、35の市場でiPhoneアプリ(すべてのゲームとアプリを含む)のダウンロード数のトップを獲得しました。また、90の市場でiPhoneの「ビジネス」カテゴリーのトップを獲得しています。

可処分時間をモバイルゲームで使う生活者

感染の影響を受けている市場では、ゲームのダウンロード数が大きく伸びています。これは、自宅にこもっている間に楽しい時間を過ごしたり暇な時間をつぶしたりするために、アプリを使っているからです。ビジネス向けアプリと同じく、このような傾向が最初に見られるようになったのは中国でした。2020年2月には、中国における1週間あたりのゲームダウンロード数が、2019年通期の1週間あたりの平均ダウンロード数より80%増加し、iOS App Storeの週平均ダウンロード数は6300万件を記録しました。2020年1月の週平均ダウンロード数と比べると、25%の増加です。 

韓国は、新型コロナウイルスの打撃を早くから受けたもう1つの市場でした。2020年2月23日の週には、ゲームの週平均ダウンロード数が2019年通期の週平均ダウンロード数より35%増加し、1500万件を突破しました。この数は、2020年1月の週平均ダウンロード数と比べて25%の増加です。

2020年3月16日の時点で、新型コロナウイルス感染症の感染者数は世界全体で18万2000人を超えました。米国や欧州の複数の国で、封じ込め政策や社会的隔離政策がとられる地域が増えています。米疾病予防管理センター(CDC)も、50人以上が参加するイベントを8週間延期するよう求めました。サンフランシスコ市は、3月17日から4月7日まで「屋内避難」を命じる政令を発令したばかりです。そして、人々は屋内で過ごす時間が増えるほど、モバイルを利用して楽しく時間を過ごそうとしています。今後は、中国や韓国と同じ傾向をたどる国がさらに増え、ゲームのダウンロード数が増加するとApp Annieは予想しています。 

App Annieでは、3月の最初の2週間における需要を探るため、ダウンロード数トップ10のゲームを調査したところ、とりわけSlap KingsWoodturningDraw ClimberBrain Test: Tricky Puzzlesが、新型コロナウイルスの大規模感染の影響を受けている市場の多くでダウンロード数ランキングのトップ10に入ったことがわかりました。 

人とのつながりや暇つぶしのためのソーシャルメディアアプリとエンターテインメントアプリ

ゲームと並んで消費者が目を向けているのは、ソーシャルメディアアプリと動画ストリーミングアプリで、人々は自らを安全な場所に隔離しながら、楽しい時間を過ごしたり親しい人と交流したりしています。中国では、新型コロナウイルス感染症の最初のアウトブレイクが発生した後、TikTokがAndroidフォンでの総利用時間および、ユーザーあたりの平均利用時間を急増させました。TikTokは、短いループ動画を見ながら時間を過ごすだけでなく、自分で動画を作成して他の視聴者を惹きつけ、彼らと交流できるプラットフォームです。2019年には、TikTok利用時間の8割を中国のユーザーが占め、世界全体の利用時間は680億時間を超えました。2020年3月1日の週は、ユーザーの平均利用時間が30億時間を超えるなど、TikTokにとって中国における過去最大の1週間となり、週間平均利用時間は2019年と比べて130%増加しています。これは、TikTokのプラットフォームにアクセスするユーザーが増えただけでなく、ユーザーの平均利用時間が増えたことが要因です。 

また、動画ストリーミングアプリの分析をしました。米国では、新型コロナウイルスの感染拡大が続くこの数カ月間も、Androidフォンで利用時間トップ10の動画ストリーミングアプリに大きな増加が見られず、3月1日から7日までの平均利用時間は4億500万時間ほどで推移しています。ただし、トップ10アプリのランキングには変化が見られました。米国で新型コロナウイルスのアウトブレイクが始まり、市場、政府、企業が対応を本格化させた2020年3月1日の週を見ると、2つの動画ストリーミングアプリが急速に順位を上げ、トップ10にランクインしました。これは、消費者がいつもの「定番」ストリーミングアプリ以外に目を向け、視聴できるコンテンツのラインナップを増やしていることを示しています。

特に注目するべきは、RokuPluto.TVで、2020年3月1日の週に動画ストリーミングアプリの週間利用時間トップ10に食い込みました(その4週間前はトップ10圏外)。Rokuのアプリは、モバイルデバイスでコンテンツをストリーミング視聴するだけでなく、Rokuプレーヤーのリモコンとしても利用することができます。Pluto.TV(およびTubi TV)は完全無料のサービスで、新しいコンテンツストリーミングサービスを探し求めているユーザーにとって、新たに利用するためのハードルが低いアプリです(NetflixHuluAmazon Prime VideoDisney+はすべて有料のサブスクリプション登録が必要になります)。 

米国では、在宅勤務や社会的距離の確保を義務付けられるようになった人々が、時間をつぶすためにモバイルに目を向け、新しい番組や映画をストリーミング視聴するようになっています。この典型的な例が、サブスクリプションが不要な無料ストリーミングアプリのPluto.TVです。アップアニーのデータでは、Pluto.TVの利用時間は大幅に増加していることが分かっています。2020年3月1日から7日までの1週間は、米国のAndroidフォンでの利用時間が前週から75%増加するなど、Pluto.TVにとって過去最高の1週間となりました。実際、この週の利用時間は、2019年から2020年の週間平均利用時間の2.5倍を記録しています。その理由は、アプリを利用するオーディエンスが増えたことと、ユーザーあたりの平均利用時間が増えたことにあります。このような状況は、アプリ提供側にストリーミング配信するコンテンツを増やす必要があることを意味します。実際、新型コロナウイルスのパンデミックが続く中で、企業各社は自宅でもっと多くのコンテンツを見たいというニーズへの対応を進めています。たとえば映画館は、劇場で公開中の映画を自宅でストリーミング視聴できるようにしています。またDisneyも、Disney+での「アナと雪の女王2」の配信時期や「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」のデジタルレンタルの開始時期を早めました。 

新型コロナウイルスの感染拡大で人との接触を控え始めたことにより、ライドシェアアプリのニーズが減少

特定の市場(米国、英国、中国、日本、フランス、韓国)のうち、ダウンロード数トップのライドシェアアプリへの影響が最も大きかったのは中国とフランスでした。中国では、Didiの1週間のダウンロード数が最も多い週から75%減少し、分析期間中(2019年1月29日から2020年3月7日)で最も少ないダウンロード数を記録しました。フランスでも、BlaBlaCarの1週間のダウンロード数が最も多い週から65%減少し、分析期間中(2019年1月29日から2020年3月7日)で最も少ないダウンロード数となっています。 

英国と米国では、分析期間中にUberの1週間のダウンロード数が大きく減少している様子は見られません。韓国のKakao Taxiと日本のJapan Taxiも、それぞれの国で1週間のダウンロード数は減少しているものの、その減少の状況はフランスや中国ほど急激ではありませんでした。外出禁止令がいくつかの市場で出されたり、バーやレストランが営業を停止したりしていることを考えれば、このような減少は予想外ではありません。封じ込め政策の効果が明らかになり、消費者が再び外に出かけるようになれば、ダウンロード数は回復すると考えています。

社会的距離の確保、在宅勤務、隔離などの施策により、フードデリバリーアプリの需要が急上昇

フードデリバリーアプリのエンゲージメントは、市場における新型コロナウイルス拡大のとともに増加し、在宅勤務や社会的距離の確保といった施策の影響を受けたものと予測します。新型コロナウイルス感染症の感染が各市場で重大な閾値に達した後に増加してる傾向が見られています。 

中国、英国、日本、韓国、ドイツ、イタリア、米国、スペイン、フランスのフード&ドリンクアプリを比較したところ、総セッション数がこの数週間で特に増えたのは米国、スペイン、フランスでした。フランスは2月16日の週に急増し、米国とスペインは3月1日の週に大きく増加していました。各セッションは、レストランの調査、注文、配送状況の確認など、食品に関する潜在的な需要を反映しているとみられます。中国ではまた、週間の利用時間が2月と3月第1週に大きく増加しましたが、2020年当初の利用時間には届きませんでした。これから数週間、強制隔離を実施し、社会的距離を確保する政策を拡大する国や自治体が増加することで、フードデリバリーアプリではこうした増加が続くとみられます。

市場が不安定化な中、フィンテックアプリの利用が増加

新型コロナウイルスの国を超えたパンデミックによって、株式市場に経済的不安定が生じていることをすでに目の当たりにしており、その影響はあらゆる業界に感じられました。原油価格の下落とあわせて立ち塞がるパンデミックとの戦いのなかで世界経済の状況がどうなるのか、消費者は懸念しています。この懸念を反映し、ファイナンスアプリの週間平均利用時間がどの市場でも増加しています。2019年最終週と比べて3月第1週の利用時間が特に増加しているのは、日本(55%)、韓国(35%)、米国(20%)、中国(20%)です。

米国ではRobinhood(投資を大衆化したフィンテックアプリ)の需要が高まり、3月前半にはiOSとGoogle Playでのダウンロード数がその前の2週間と比べて50%増加しました。日本では3月第1週に、決済アプリau PAYのAndroidフォンにおける週間利用時間が、前の週から20%増加しました。韓国でも同時期に、フィンテックアプリPASS by SK TELECOM(, T인증)の週間利用時間が20%増加しました。

ストレスへの対処と感染抑制にメンタルヘルスと遠隔医療のアプリの利用が増加

米国では2020年3月1日の週にかけて、ヘルスケア/フィットネスアプリとメディカルアプリのAndroidフォンにおける週間平均利用時間が大きく増加しました。Headspace(瞑想とマインドフルネスのアプリ)は3月第1週、米国のiPhoneにおける利用時間が、前週から90%増加しました。在宅勤務と隔離の政策が実施され、消費者は心の平安とストレスへの対処のためモバイルを頼りにするようになっています。また同じ週に、Mayo Clinicアプリの米国のAndroidフォンにおける利用時間が前週から200%増加しました。このアプリは、診療予約の日程、医療専門家とのセキュアなメッセージ機能、症状と疾患に関する情報、検査結果の閲覧などを利用できます。

中国では、2月全体と3月第1週を通じて、ヘルスケア/フィットネスアプリとメディカルアプリの利用時間が大きく増加しました。エクササイズアプリのKeepは、隔離中の人々が外に出られないあいだも運動に努めたことで、2020年2月の利用時間が前月比で210%増加しました。両カテゴリーのアプリの利用は、日本でも大きく拡大しました。診療予約アプリのアイチケットは3月1日の週に、日本のAndroidフォンにおける総利用時間が50%増加しました。

今後数週間の対面での接触減少に際し、マッチング系アプリのゲーム要素がエンゲージメントの維持につながる予測

米国ではバレンタインデー後の数週間、マッチング系の上位アプリのアクティブユーザー数が減少しています。ただ、バレンタインデーのあたりでピークを迎え、それから数週間、少し減少するのは例年のことで、今年の状況もこれに沿っている点には注意が重要です。新型コロナウイルスの影響はあるかもしれませんが、現在の動向が例年の季節変動に沿っていることから、新型コロナウイルスが利用状況にもたらす影響を評価するには、さらに数週間の動向をウォッチする必要があるでしょう。 

マッチング系アプリでは、実際に会わなくてもマッチングとメッセージのやりとりを活発に続けることが可能です。アプリの利用が対面のやりとりにつながることが通常の利用形態であるライドシェアのような業界は、そのようにはいきません。結果、中国やフランスなど大きなアウトブレイクがあった国では、この数週間、ライドシェアの上位アプリの需要が減少しています。米国では、今のところこうした減少はまだ見られませんが、国や自治体が社会的距離の確保と移動制限の措置を強化しており、今後数週間で減少するおそれがあります。一方、モバイルゲームのダウンロード数と上位ソーシャルアプリの利用が増加しており、都市の閉鎖や在宅勤務を要請される政策により屋内にとどまる必要があるあいだの娯楽のため、消費者はモバイルを頼りにしているようです。マッチング系アプリは、「スワイプ」のゲーム要素がこの時間つぶしの行動にあてはまるため、一定の回復が期待できるかもしれません。

モバイルの動向をウォッチするべき理由 - さらに無視できない存在へ

モバイルは市場の状況や生活状況を反映します。アプリは、1日を乗り切る活力になるものであり、世界と私たちをつなげてくれるものです。ストレスが大きいときに必要な情報やサービスが、アプリならすぐに利用できます。アプリを使う目的は、仕事の継続、気晴らし、娯楽のためと人それぞれですが、自らの役割を果たし、健康と情報を備えるためのチャネルであるとも言えるでしょう。

これからの数週間で、アプリにおける行動を通じて新型コロナウイルスの影響が顕在化するものとみています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を抑制するための予防措置を取る国と企業が増えて、消費者の自宅待機や自己隔離が続くと、ほぼすべての業界の方々にとって新しい消費者行動をもたらすことが予測されます。

日々変わる消費者行動を理解するためにはアプリ市場データを紐解くことから始まります。アップアニーでは無料版を提供しております。ぜひご利用ください。

 

2020 M03 30

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